ビルマ/ミャンマー難民医療

ビルマ/ミャンマー移民・難民医療の背景

ミャンマー国内では、医師不足や、貧困層と富裕層、地方部と都市部の”医療制度の格差”が深刻な問題となっています。

 ミャンマー主要都市ヤンゴンに集中した医学部からの卒業生は年間600人しかおらず地方都市での医師不足、かつ医師の給料の低さも問題となっています。看護師育成学校は設備も学校数も不十分といわれています。

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 ミャンマーの国家予算の内、GDPの約0.3%しか保健医療に充てられていません。それでも富裕層には手厚い医療保健サービスが提供されます。富裕層は公立病院よりもより良い診療設備とサービスを兼ね備えた私設病院を受診し、高額な診療費、検査費、内服薬を支払うことができます。それに引き換え、貧しい者にとっては、とても冷たい医療制度となっています。ビルマ語のみの診療、お金のない者は病院前にて門前払いの現状です。

 地方都市や少数民族への医療整備は不十分な状態が続いており、1988年の民主化運動以降発生した、メーソートだけで約10万〜15万人の移民・難民、ミャンマーと、タイの国境地域に居住する約100万人の移民への医療・保健制度は現在でも整ってはいません。
 移民たちは、メータオ・クリニックでの医療を求める他は、医療を受ける事、病院を受診することを断念する方法しかありません。人々は、命が長らえられる事を祈り、病の治癒を願い、死を迎える時を待つ事しか出来ません。メータオ・クリニックは、その様な背景をもつ人々にとって希望の光であり、心の拠り所となっているのです。

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タイ国内での移民への医療体制

 タイ国内の病院(例えば、メーソートジェネラルホスピタル)は、タイのIDカードまたはタイの労働許可カード(年間約12,000円)がない場合、患者は医療費は全額負担となります。ミャンマー国内からの受診者は、言葉も通じない病院での診療、タイでの高額診療費を恐れ、受診出来ません。IDカードの無い患者が、救急部を受診した場合、全額負担となり救急病棟滞在費用のみで1日1,000B(約3,000円)、その他に診療費、薬剤費などが請求されます。

ミャンマー国内の医療体制

 ミャンマー国内での医療費は、高額で、まず病院受診の為に医師紹介ブローカーにお金を支払わなければなりません。また、薬剤も高額で糖尿病の内服薬のみで一ヶ月10,000円以上支払う必要があります。運良く病院へ受診出来た場合でも、採血検査に針やシリンジ等を購入する必要が有り、約4,000円かかります。入院出来た場合、看護師の指定した薬局で指定された薬剤を必要量以上に大量購入させられるなどの問題が多数存在しています。お金のある人々しか、医療は受けられないと言う現状です。
ミャンマー国内のミヤワディー病院では、医師は駐在しているものの、高度な医療の提供は実施されていないとの事。産科の帝王切開は不可能で、ミヤワディー病院から、ひとまずメータオ・クリニックへ転送されてきます。そしてタイのメーソートホスピタルへと移送されています。

移民・難民医療、メータオ・クリニックの現状

 タイ/ミャンマー国境付近の移民・難民へ無償医療を行ってきたメータオ・クリニックは、年間約10~15万人の患者さんが受診しており、その内50%の約7万5千人はミャンマー国内から訪れます。

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 民主化・少数民族紛争の停戦など国境を取り巻く状況によって、患者層は著しく変化していきます。最近では、肺炎や下痢などの感染症や、高血圧や甲状腺疾患、糖尿病などの慢性疾患の患者数が徐々に増加しています。戦いや地雷による負傷者は減少しましたが、現在でも年間100人以上の人々が地雷で足を失っています。(ICRC調べより)

 民主化が進み、成長が著しいとされるミャンマーから、タイ/ミャンマー国境付近の難民・移民には、医療・福祉の支援はまだまだ届きません。難民・移民問題が発生して以降、国際NGOからの支援に頼っており、毎年約3億円を予算としているメータオ・クリニックの財源も、国際NGOからの支援なしには成立しません。

 しかし、ミャンマー国内へ国際NGOの支援が移行し始め、クリニックはより厳しい資金難に見舞われています。そのために、クリニックは緊急支援のお願いを国際NGOに依頼する傍ら、クリニックスタッフの退職を促す対応や縮小や閉鎖できる診療科の検討を行っています。
2012年9月より、外科では、緊急性の低い処置や手術の延期を余儀なくされた他、内科では、新規慢性疾患の患者さんには内服の処方が中止されているという現状です。更に、重症の患者さんの他院転送も控えている等、難民・移民医療はより厳しい状況になっています。

>>メータオ・クリニックについて